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「あなたは私の国王ではない」—オーストラリアでの抗議から考える君主制と共和制

2024年10月21日、オーストラリアの国会議事堂でイギリスのチャールズ3世国王が演説した際、先住民の議員リディア・ソープが「あなたは私の国王ではない」と叫び、国王と英国王室への強い抗議を表明しました。この行動は、オーストラリア国内で高まる共和制移行への関心を象徴する出来事であり、同国の歴史的背景や将来の体制を巡る重要な議論を呼び起こしています。

引用元: BBC News Japan: オーストラリア議会でチャールズ3世国王に抗議の声

www.bbc.com

 

この記事では、君主制と共和制の違い、オーストラリアの共和制への動き、そしてコモンウェルスの変化と課題について考察します。

 

君主制とは何か?
君主制とは、国王や女王といった君主が国家元首の役割を担う体制です。伝統的には、君主の地位は世襲制によって継承され、王族内で権力が引き継がれます。現代では、立憲君主制が主流となっており、イギリスや日本のように、君主の権力が法律で制限され、実際の政治運営は政府や議会が担います。

君主制の特徴
象徴的な国家元首:政治の実権を持たず、国家統一の象徴となります。
伝統の重視:儀式や行事を通じて国民の文化的アイデンティティを支えます。
安定感の提供:長期間にわたり一貫した元首が存在するため、政情不安時に国民の精神的支柱となる場合があります。


共和制とは何か?
共和制は、国家元首を選挙などの民主的な手続きによって選ぶ体制です。大統領などが国家元首となり、国民や議会の信任を受けて任期制でその役割を担います。共和制は、主権が国民に属するという理念に基づいています。

共和制の特徴
国家元首の選挙:大統領や元首は国民の投票または議会の選出で決定されます。
任期制の導入:元首が一定期間で交代するため、政治が時代に即した変化を反映できます。
国民の平等:権力は世襲されず、すべての人が同じ立場で政治に参加できることを強調します。

 

ちなみに、国の数で言うと、現在、世界には約 43の君主制国家がありますが、その内訳は立憲君主制が多く、少数の国では依然として絶対君主制が採用されています。

君主制の代表的な国()内は2024年10月時点
イギリス - 立憲君主制(チャールズ3世が国王)
日本 - 立憲君主制(天皇が象徴的国家元首)
カナダ - 立憲君主制(イギリス国王が元首、総督が代理)
スペイン - 立憲君主制(フェリペ6世が国王)
スウェーデン - 立憲君主制(カール16世グスタフが国王)
デンマーク - 立憲君主制(マルグレーテ2世が女王)
オランダ - 立憲君主制(ウィレム=アレクサンダーが国王)
ベルギー - 立憲君主制(フィリップ国王)
ノルウェー - 立憲君主制(ハーラル5世が国王)
タイ - 立憲君主制(ワチラロンコン国王)

 

共和制は、現代の政治体制で約150の国に採用されています。大統領制、半大統領制、議院内閣制などの形式に分かれます。

大統領制:アメリカ、ブラジル、韓国など
半大統領制:フランス、ロシア、ポルトガルなど
議院内閣制(象徴的な大統領):ドイツ、イタリア、インドなど

共和制の代表的な国
アメリカ合衆国 - 大統領制共和制(大統領が国家元首)
フランス - 半大統領制(大統領と首相が協働)
ドイツ - 議院内閣制(大統領は象徴的存在)
イタリア - 議院内閣制(大統領が象徴的国家元首)
インド - 大統領制(間接選挙で選ばれた大統領が元首)
南アフリカ - 大統領制(議会が大統領を選出)
ブラジル - 大統領制(直接選挙で選ばれた大統領が統治)
メキシコ - 大統領制(大統領が政府と国家を指導)
アルゼンチン - 大統領制(大統領が行政府の長)
韓国 - 大統領制(大統領が元首および政府の長)

 

英国連邦制の仕組みと役割
英国連邦(Commonwealth of Nations)は、イギリス帝国に属していた国々を中心に構成され、歴史的なつながりを持ちながらも、各国が自主的な主権を有する組織です。加盟国には、イギリス国王を国家元首とする国と、共和制に移行した国が混在しています。

連邦に残るメリット
外交的な協力:加盟国間で政治・経済の協力を深め、共通の課題に取り組む枠組みがあります。
教育・奨学金プログラム:連邦内の若者が参加できる奨学金制度が整っています。
ビザと渡航の優遇:一部の加盟国間でビザの免除があり、人々の往来が促進されます。
連邦に残るデメリット
植民地主義の残滓:イギリス国王を国家元首にする体制は、植民地支配の名残とされ批判されることがあります。
共和制支持派との対立:君主制の存続が、共和制を求める人々との社会的な亀裂を生むこともあります。

オーストラリアの動きと共和制移行の議論
オーストラリアでは、1999年に一度共和制移行を巡る国民投票が行われましたが、結果は否決されました。しかし、その後も共和制を求める声は根強く残り、特に若い世代を中心に議論が再燃しています。チャールズ3世の即位後、国王の象徴的な役割への批判が強まり、オーストラリア国内では先住民問題と絡めて共和制移行の動きが再び活発化しています。

共和制移行の手順
国民投票の実施:国民の合意を得るため、共和制移行の是非を問う投票が必要です。
憲法改正:オーストラリア憲法には、イギリス国王を国家元首とする条項があるため、これを改正する必要があります。
新たな国家元首の選定:大統領制に移行する場合、その選出方法(直接選挙か議会選出か)を決める必要があります。

共和制移行のメリット・デメリット
メリット
国民の平等意識の向上:すべての人が平等な立場で政治に関与できることを強調できます。
植民地主義からの脱却:王室との関係を解消することで、国の独立したアイデンティティを確立できます。
政治的な透明性:選挙を通じて選ばれる元首により、政治の透明性が高まります。
デメリット
移行期の不安定さ:体制の変革には時間がかかり、政治的・社会的な混乱が生じる可能性があります。
象徴的存在の欠如:王室が果たしていた精神的支柱の役割が失われることを懸念する人もいます。
コストの増加:新しい大統領制の導入には、新しい制度設計や選挙に多額の費用がかかります。

 

コモンウェルスとスポーツの結びつき
コモンウェルスゲームズの意義
コモンウェルスゲームズは、スポーツを通じて英国連邦加盟国間の交流を深める国際大会です。オリンピックに次ぐ規模の大会として、加盟国の多くが好意的に参加し、スポーツ強国のオーストラリアも頻繁に開催国を務めてきました。大会は、歴史的なつながりをスポーツという平和的な形で再構築する場として評価されてきました。

2026年コモンウェルスゲームズの中止問題
ビクトリア州での中止決定
2026年に予定されていたコモンウェルスゲームズは、オーストラリア・ビクトリア州で開催される予定でした。しかし、2023年に州政府が財政的負担を理由に開催の中止を決定しました。当初の予算は約25億オーストラリアドルと見積もられていましたが、最終的に約60億ドルまで膨れ上がると予想され、大会運営が不可能と判断されました。

各国への影響と批判
ビクトリア州の決定は、コモンウェルス全体で大きな議論を呼びました。多くの国は、この大会を国際的な連帯の象徴と捉えており、中止は連邦諸国の団結に影響を与える可能性があります。また、大会を楽しみにしていた多くの選手からも不満の声が上がっています。

共和制への移行とコモンウェルスの未来
今回の中止は、オーストラリアが抱える共和制移行の議論とも無関係ではありません。共和制支持者の間では、「大会への多額の投資が不要である」という主張が出され、連邦からの脱却を求める声が強まっています。また、王室への依存が減り、国民の税金がこうした象徴的イベントに使われることへの反発も広がっています。

一方で、スポーツは政治と切り離すべきだという意見もあり、コモンウェルスゲームズを通じた国際交流の意義を評価する声も依然として根強いです。

 

結論:変わりゆくコモンウェルスとオーストラリアの未来
オーストラリアにおける共和制への移行の議論は、チャールズ3世の即位後に再燃し、王室との関係見直しが加速しています。さらに、2026年のコモンウェルスゲームズの中止は、オーストラリア国内で連邦との関係や、国家としてのアイデンティティに対する再考を促しています。

共和制への移行は、国民にとっての平等を象徴する一方、伝統を失うリスクや新たな政治的不安も伴います。また、コモンウェルスゲームズのようなスポーツイベントは、加盟国間の絆を深める重要な役割を果たしており、スポーツと政治のバランスをどう取るかが課題となるでしょう。

今後のオーストラリアの選択は、同国の未来だけでなく、英国連邦全体の在り方に影響を及ぼす可能性があります。共和制への移行を選ぶ国が増える中、コモンウェルスとその大会がどのように存続し、進化していくかが注目されます。